◇◆◇◆◇◆はじめに◆◇◆◇◆◇


1998年3月、名古屋の中日劇場でミュージカル『レ・ミゼラブル』が公演された。
『レ・ミゼラブル』の中日劇場での上演は1994年以来4年ぶりで、ファンにとっては待望の公演であったようだった。
筆者は幸運にもこの公演のチケットを偶然入手し、観劇することができた。これが筆者と『レ・ミゼラブル』との出会いであった。
筆者は『レ・ミゼラブル』=ヴィクトル・ユゴー(以後ユゴーと省略)ということを知っているだけで、
作品の内容や作者についての知識は皆無であった。
日本では『ああ無情』という題で児童書などになっているが、
正しく翻訳すると「みじめな人々」という解釈になる。ミュージカル『レ・ミゼラブル』を観劇するにあたり内容を知らなかったので、
注目したのは俳優陣であった。そして、ミュージカルというくらいだから音楽にも興味を持って観劇を試みた。
筆者もミュージカル経験者であったので、そういった意味でも高い関心を持っていた。
この物語の登場人物は、全てが「主人公」というように個々が人生を語っており、
筆者はこれほどまでに役が主張している舞台をいままでに見たことがなかった。
「V.ユゴーの『レ・ミゼラブル』の中には、必ず自分に当てはまる人物がいる」と言われるが、
ここがまた多くの人の心に残る作品であるように思われる。
この『レ・ミゼラブル』は、ミュージカルだけにとどまらない。
映画化(1995年のクロード・ルルシュー監督『レ・ミゼラブル輝く光の中で』と
1998年ビレ・アウグスト監督の『レ・ミゼラブル』の2作)が最近では注目されているが、
1909年に映画化されてから数多くリメイクされている。映画という映像にしかできない表現法に込められた心理描写や、
背景にも注目していきたい。また、バックミュージックにおける音響効果についても考えていきたい。
作品の舞台は19世紀初頭のフランスで、一切れのパンを盗んだ男が牢獄から仮釈放されるところから物語が始まる。
この作品は、登場人物と一緒に読者を「人間の道徳心・正義感・友情・信頼・愛情・忠誠心」などにおいても考えさせてくれる。
荒廃したフランスで「明日」を夢見る人々の行動は現代に通じるところがあり心に響くものがある。
また、原作者であるユゴーは1802年にフランスに生まれた作家で83歳の長い人生を送った。
そして、2002年には生誕200年を迎える。19世紀フランスロマン派の中心人物であったユゴーは、
言論の力で人々の魂を揺り動かし、社会の不平と闘いつづけたその生涯は筆者にとって関心が高い。
この論文では、『レ・ミゼラブル』という超大作が映像になることによって、その感動がどのような印象をあたえるのか、
背景の「革命」によって人生を大きく変えられてしまう人々の数奇な運命を辿っていきたい。





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◇◆◇◆◇◆おわりに◆◇◆◇◆◇


 今回ミュージカルを中心にユゴーの『レ・ミゼラブル』の作品に触れてきたが、全体を通して感じたのは、
『レ・ミゼラブル』で論文を書きたいという気持ちと、実際に資料を集めて原稿にしていく難しさを痛感したということだ。
ユゴーの原作訳の本があんなに分厚くて自分には絶対読みきれないと落胆して本当に論文を諦めようとしたが周囲の友達に
「楽しみにしているよ、頑張ってね」といわれ、引き返せないなと感じていたが、今卒業論文として出来あがった論文を
やってきて本当に良かったと思った。

何度も書いては納得のいかない文章になり、一時はワープロの電源を何日もつけないということもあったが、
ミュージカルのCDを聴く度にマリユスが「一緒に戦おう」という場面で勇気付けられた。
また、素晴らしい音楽に「これが海外版だったらなんと言うのだろう」と興味から海外版CDを探す日々が続いたり、
資料集めに熱中した夏休みは忘れられない。偶然古本屋で見つけた『レ・ミゼラブル』の楽譜を手にしたときは
「私が買うのを待っていたのか」というほど感動した。
映画も初めはレンタルビデオで見ていたが、最後には自分専用の物が欲しいとDVDを購入した。
初めて買ったDVDが『レ・ミゼラブル』というのにも満足して、
いつの間に『レ・ミゼラブル』の世界に深く浸かっている自分に気がついた。
このころから、毎日少しずつワープロ画面と向き合って原稿も進むようになってきた。
思えば、ほとんどコンピュータ関係に手を触れた事のなかった自分が今、
こうして論文をワープロで打っているのは物凄い進歩であり、
この卒業論文は、筆者にとって「IT革命」であったように感じる。
また、自分の知らないミュージカルの世界ものぞくことができ良い経験になった。
そして、原稿を書き上げた今、次にしたいことはなにかというと、12月3日に東京帝国劇場で開幕した20世紀最後の
『レ・ミゼラブル』の舞台を見に行くということである。そして、今回は『レ・ミゼラブル』のミュージカルしか追究する事が
できなかったが、機会があれば、海外に行ってウエスト・エンドや
イースト・パレスのミュージカルを見ることができればと思っている。
最後になってしまったが、この論文を書くにあたってご指導下さった先生、貴重な体験談を聞かせてくださった先生方
資料を提供してくださった方々に深く感謝します。ありがとうございました。


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