第4章 『レ・ミゼラブル』が教えてくれること


第4章『レ・ミゼラブル』で学ぶ教訓

1.愛と正義と友情

 物語の至る所に『愛』を感じる『レ・ミゼラブル』だが、愛と同じように感じられるのが『友情』である。
マリユスとコゼットの『恋人同士の愛』、エポニーヌのマリユスへの『叶わぬ愛』、
また、ファンティーヌのコゼットにもう一度会いたいという想いは『叶わぬ(親子の)愛』だった。
また、ジャン・バルジャンとコゼットの『家族愛』、マリユスと革命仲間の『友情愛』などから愛を感じずにはいられない。
小説ではファンティーヌがコゼットのために、髪や前歯を売ってお金にするという部分に、
驚きと母の子に対する愛情の深さをを感じた。
また映画では市長に助けられたファンティーヌが感謝と愛を持って市長に接している様子が、
ユマ・サーマンの演技によって、伝わってきた。
また、マリユスたち学生が、市民のために国を共和政にしようと立ち向かうシーンは「正義のために戦う」男達の姿がある。
何が正しいのかを探っている学生らしい一面からも新鮮さを覚える。
これは、19世紀フランスにだけ当てはまるものではなく、今この時代どこの国にも必要だと思うが、
マリユス達の熱き想いは現代にはあまり見られないのが筆者は残念に思う。
しかし、自分では行動は起こせないがどこかに正義の心は生きていて、この勇気を貰うために多くの
『レ・ミゼラブル』ファンは劇場に足を運ぶのかもしれないとも感じる。
ミュージカル『レ・ミゼラブル』に出演する山口祐一郎は共演者のことを「舞台上で大好きな友達が待っていてくれているよう」と
いっている。『レ・ミゼラブル』は、役者にも観客にも友情を訴えかける作品であると実感した。
それから、友情の面ではマリユス達学生の団結力や仲間をいつも気にかけている様子から友情とは何かを思い出させられる。
作品を見ていると忙しい現代では、友情など感じる機会さえなくなって、会話も少なくなっている様に感じる。
同じ目標を持っていつも一緒にいた仲間たちが今、側にいないそういう状況になって初めて「仲間っていいな」と思えてくる。
「自分の学生時代はこうだった」と共感してしまう。
そして、もう一つの友情はジャン・バルジャンとジャベールのものである。
こちらは、大人の友情で筆者にも全ては判りかねないところもあるが、社会に出てからの友情といった気がする。
社会のルールの中で守らねばならないことを破る側と、取り締まる側という立場にありながら長年付き合ってきて
お互いの性格も知っている二人から溢れる友情は複雑であるが、決して憎みあっているわけではないというところが
深い魅力になっていると思われる。作品を読んでいてもジャベールは決して憎まれる人物には描かれていない。
ただ、正直で職務を遂行している。人にも自分にも厳しく、それがジャベールにとっての正義でその信念を貫くために
冷酷になってしまっているだけなのだ。この物語には誰も悪者は出てこない様に筆者は思える。


2.『レ・ミゼラブル』の永遠性


 ミュージカル『レ・ミゼラブル』は、海外での公演を含めると今年で15年目を迎える。
ウエスト・エンドでは『キャッツ』(19年目)、『スターライト・エクスプレス』(16年目)、に続くロングランミュージカルである。
また、映画界での数多くのリメイクなど、これほどまでに長く上演され、観客に愛される作品の魅力は他にはない。
やはり、ユゴー作の『レ・ミゼラブル』の内容の濃さ、ユゴーの波瀾な人生からの想いがこもった作品が感動を与えるのだと考えられる。
また、ミュージカルにはなくてはならない音楽の素晴らしさも影響していると思われる。

 ユゴーはフランス人の最も誇りと思う人物の一人である。
そして、ユゴーは亡くなった後もフランスに多くの思いを残している。
凱旋門から続く道はユゴー通り(ユゴーの80歳の誕生日である1881年2月26日にエイロー通りから改名されて)として
名前が今も残っている。ユゴー広場を抜けるとユゴーがかつて住んでいた家の跡地がある。
その跡地にはユゴーの顔が彫刻された壁が今もある。
ユゴーは1885年5月22日生涯の幕を閉じたがその日フランスは嵐に見舞われひょうが降ったという。
彼の最後の言葉は「闇に明かりが見える」であった。
これは小説でジャン・バルジャンが昇天するときのようであると筆者はおもった。
また、作品もユゴーファンだけでなく、フランスという国に深く残って切っても切れない関係なのではないかと感じる、
下水道(注1)がある。フランスではジャン・バルジャンがマリユスを背負って下水道を通った道順をツアーで見ることができ
毎年大勢の観光客で賑わっている。
このようにフランスがユゴーを身近に感じていることは元より、世界中の人々にも長く愛されていることがわかった。
また、ミュージカルや映画で多くの人々に感動を伝えユゴーの名前とともに『レ・ミゼラブル』がこの先ずっと続いていくように感じた。




注1

パリの下水道の歴史は古く、ナポレオン3世の時代から発展を遂げている。
下水道ツアーでは、発展途中の下水道工事の様子が模型で見ることができたり、

現在の様子や下水道でファッションショーが行われた様子が展示されている。




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